笑ってる場合じゃないよ

建て替えの打ち合わせのために実家へ。
母は常々祖父母との同居での不満を口にする。私はその改善点を新居に反映できなければ建て替える意味がないと考えている。だから工務店との打ち合わせの前に、母屋での同居の不満をまとめてきてくれと口を酸っぱくして言ってきた。しかし母は工務店の担当者に上手く伝えられないのか、伝える気がないのか、毎回話が脱線に脱線を重ねて時間切れで終わる。
この日もそうだった。資金計画の話もしたかったので、暇そうにしていた息子に、「おばあちゃん(私の母)と散歩に行ってきなさい」と母を追い出した。退屈していた息子は喜んで、母が飼っている雑種犬と母と一緒に家の外へ駆けて行った。
やっと静かになった。今日も全然話が進んでない。設計の打ち合わせには全員が納得するまで何ヶ月でもかけていいと考えていたが、母の中身のないおしゃべりでいたずらに延びるのはゴメンだ。
話を再開してしばらくすると、「ギャ〜!」という悲鳴がした。何事だと外へ出ると、息子が泣きながら玄関へ向かって歩いてきた。右腕の付け根辺りから血が出ている。その後をニヤケ顔で戻ってきた母に事情を聞くと、「じゃれあってたら犬が噛んじゃったみたい」と言う。
笑っている場合じゃないだろ。まさか飼い犬に狂犬病の予防接種をしていないわけはないよなと思ったが、念のため確認する。
「え?打ってないよ(テヘッ」
妻は倒れそうになっていた。狂犬病を本気で心配していたわけじゃない。その非常識さに血の気が引いたのだろう。身内以外に迷惑をかけたらどうするつもりだったんだ。
直ちに病院へ行き、先生からも飼い犬には予防接種をするようにとこってり絞られた。

母も反省したようで、病院ではただ申し訳なさそうにオロオロしていた。明日にでも予防接種に犬を連れて行くようにと注意すると、言い訳しながら話を逸らした。

これ以上ガッカリさせないでくれよ。