妻を"また"泣かせてしまった

妻の話。
「同居の話が進むにつれ、不安が高まっている。」
「あなたの親族は皆さんいい人だと思う。息子に本当に愛情を注いでくれているのがわかる。特におじいちゃん、おばあちゃんは優しくて好きだ。」

「一番不安なのは、やはり義母との生活。片付けられない部屋を今日見てしまったが、絶句した。」

私はこれまで、積極的に妻の前でゴミ屋敷について触れることができなかった。実家ではなるべく祖父母の居住スペースで過ごすようにして、台所や離れから妻を遠ざけていた。
一緒に新居に住んでしまえば同居が上手くいき、ゴミ屋敷は再生するはずが無いと楽観的に思い込んでいた。妻も、新居が建てば母の生活習慣も改まるはずだし、妻が新居をゴミ屋敷にはさせないから大丈夫だと言っていた。
新居に建て替えるとはいえ、ゴミ屋敷の住人と敢えて同居したい人間はいないだろう。しかし妻は同居の話が出てから今まで、不満をなるべく表に出さないようにしてくれていた。新居が楽しみだねと言い続けてくれていた。私はそれを知りながら甘えていたんだ。
そんな妻がいよいよ同居の件で不安を口にした。やはり無理な話だったか。いや、まだ建て替えてもいないし同居してからモメるよりは良かったかな。

「それに加えて、今日のおじいちゃんの言動には本当に驚いた。」

両親からは、最近祖父の独り言がうるさいとは聞いてはいた。特に母が愚痴をこぼしていた。昔から独り言をブツブツ言っている祖父ではあったが、だがまさかあそこまでだとは…。人の声が全く耳に入らず、ただ大声で怒鳴り声を発する様は普通ではなかった。
しまった、妻には祖父の件は話していない。こんな大事な事情を伏せたまま同居話を進めていたなんて。もう遅いがとにかく謝らなければ。それでどうなるというものでもないが。

「あのさ、隠すつもりはなかったんだけど、じいさんのこと黙っててゴメ・・・」
妻は泣いていた。
理由がわからないので、母に何かまた変なことでも言われたのかと聞いてみた。
「…なんでわかってあげられないの…。お義母さんの今までの行動や、お義母さんに言われたことが今日やっとわかった。もっとお義母さんのことを考えて、新居の話を進めてよ!」

「え?」