不孝の上塗り -ゴミ屋敷と暴力- 1

八月の頭頃だっただろうか。母親を泣かせてしまったことがあった。
今でもあの光景は信じられない。悪い夢だったことにしようと、脳が記憶の再生を拒否しているようだ。


妻を里帰りさせ連休を取った私は、今度こそゴミを整理してやると朝から意気込んでいた。正直、家族サービスと母親のゴミ屋敷片付けの両立は厳しい。限られた休みの時間を片付けに費やしすぎると、必ず妻からクレームが出る。
「お義母さんばっかり話してないで、こっちの相手もしてよ。つまんなーい。どこも行けない」

「・・・。σ(^_^;)」
そんなこんなでなかなか本腰を入れて片付けに専念出来なかったのだが、帰省中の今こそゴミ屋敷片付けの最大のチャンスだ。
いま振り返ると、意気込んでいたというより、馬がパドックで「入れ込んでいる」状態に近かった。
自分の希望が最善の選択で、母にとっても良いことに違いないと思い込んでいた。相手の意見を受け付けるつもりなど毛頭ない。ただ限られた時間の中で、どういう手順で目的を遂行するかしか考えていなかった。

六月から七月の間、新しいゴミ屋敷に住みついた母に、新居で一緒に暮らそうと時間をかけて説得してきた。関係も徐々に回復し、新居が建つ前に一度片付けることの必要性は解ってもらえた様だった。
母は常々片付けを一方的にされるのは嫌だと言っていた。それなら二人で作業しようと、朝から片付けを始めた。帰省している妻子の近況なんかを、冗談も交え話しながら作業していた。

決して悪いムードではなかった。