親族会議2ー子にだけ分かる親の心理

母親の言い分はこうだ。
「どうせ自分のいる離れだけ壊されるんだ」
「どうせあんたたちだけで話を進めて、あたしの言い分なんか聞いてくれない」
「同じ敷地に他人(私の妻)と暮らしたら息が詰まって仕方がない」
「どうしても越して来たいなら、同居ではなく道路を挟んだ畑を潰して勝手に建てればいい」

根回しの段階では好感触だったのに、この豹変ぶり。
今日の議題を書いて全員に配布した紙も意地になって目を通そうとしない。
熱くなっている人間にこちらも感情的になってはいけないと、冷静さを保ちながら母の言い分を聞き続けた。叔父叔母や祖父母には退席してもらい、一方的に文句を言われ続ける時間が続いた。

昔から母は決められた物事には取り敢えず反対する天邪鬼な性格だった。その母の下で育った私も性格を受け継いでしまい、この性格のおかげで今まで不必要なもめごとを何度も起こしてきた。これは自分の欠点だ。しかしそのおかげで母の心理も理解できるので、その裏にある感情を推し量りながら聞いていた。
おそらく母は、夫の両親と同居することの難しさを説きたかったのだと思う。それに加えて、やっと子育てから開放された今の自由な生活を侵してもらいたくない感情があるのかもしれない。

しかしものの言い方がある。せっかく田舎に引越して同居してもよいと言っている私の妻に対して「同じ敷地に他人と住みたくない」はないだろう。
親の性格を理解して聞き流している私ですらショックは少なくなかったのだから、妻のショックは相当のものだったはずだ。

母には今日始まったばかりの話を今日のうちに決めてはいけないという思いがある。それを皆が揃った場で上手く言えない。あれもダメこれもダメと解決策を考えようとせずに、ただ難癖をつけて駄々をこねているだけなのだ。

だが、私の妻に伝わるわけがない。

思いつきで出た口先だけの非道い母の言葉を正面からぶつけられた妻は、それを言葉通りに受け取り傷付いてしまった。
しかし母は本心では反対していないので、話の合間に妻と世間話をしようとする。妻が母の言葉のせいで態度を硬くしていることに気付いていないのだ。

こちらの話を聞く気が全くない母には初日の今日はこれ以上説得しても無駄だと思った。言いたいことを言ってもらいメモに残して来週に持ち越せばよい、と。
妻にも意見や今日の感想を聞きたかったので、開始から五時間ほどでファミレスを出た。

帰りの道中、誤解を早い段階で解いておかねばと思い「俺も傷つくほど非道いことを言っていたが本心ではないと思う」「言いたいことを上手に言えない性格なんだよ」と妻に説明したが、全く理解されなかった。
自分で書いていて思ったが当たり前だな。