兎を得て罠を忘れる

同居はしないにしても、同じ敷地内にゴミ屋敷があっては意味がない。
新居の設計は後回しだ。妻に任せよう。あまり興味もない。工務店にとっては相当迷惑な客だが、設計にはたっぷり時間をとってもらう。今は新しくできたゴミの山の片付けに専念したい。

とりあえず、建替えの計画からゴミ屋敷の解体までは想定通りに進んだ。嫁姑の不毛な争いもここまではなんとか避けられている。
しかし、仮住まいの祖父母の部屋の掃除を母がしないことで、妻が精神的に不安定になってきたようだ。わずか一ヶ月で仮住まいもゴミ屋敷になってしまったからだ。
母は仮住まいにも住まず車庫に暮らしているのだが、使用する仮住まいの台所は悲惨の一言だ。正に足の踏み場もない。祖父母も父も掃除をしないために、あちらのスペースだけが非常に不潔な空間になっている。
とはいえ、私は祖父母も父も責められない。家族に勝手に掃除をされて、ヒスを起こす母を何度も見てきたからだ。世間一般の家並に綺麗にしたいと掃除をする度に衝突を繰り返して、次第に嫌気が差し、誰も掃除をしなくなったのだ。私も今まで放置してきた。

まずは仮住まいの掃除をするか。烈火の如く怒り狂う母の姿が目に浮かぶな。
これからはいくつかのアプローチで、片付けられない人間の意識改革を試みてみようと思う。時には泣き落とし、時には実力行使で。娘である私の妹や、母の兄妹にも協力してもらうかもしれない。

こんな恥ずかしいこと晒して、自分も大概アタマおかしいと思うが、追い詰められた母の◯◯◯◯っぷりが楽しくてやめられない。


「やりたくても出来ないんだよね。わかるよ。それは仕方のないことなんだよ。あなたのせいじゃなくて、病気なんだから。さぁ、一緒に病院に行こう」

さて、まずはこれでいくか。