家貧しくして孝子顕る

家汚らしくして、か。うちの場合。

「なんて親孝行なの、今時同居してあげるなんて」「立派な新築を建てるの?羨ましいわ」なんて言いながら、「やっとゴミ屋敷を片付ける人間が現れたか」って顔に書いてありますよ。ご近所の皆さんには長いこと迷惑を掛けました。付き合いづらかったでしょう、お察しします。

孝行が同居の動機かといえば、そうでもない。確かに父親、祖父母へは孝行の気持ちはある。だが、母親には復讐の感情しかないんだよな。

ゴミ屋敷で俺ら兄妹を育てたこと。恥ずかしい思いを山ほどさせられたこと。挙げ句の果てに、ゴミ屋敷の後始末までさせられて。本当にゴキブリの親に育てられたようなもんだ。

人生の失敗全てを同居のせいにして、殻に閉じこもるゴキブリの親を見ていると、怖くて同居には踏み出せない。同居するかどうかは、まだ決めなくてもいいや。
まずはゴキブリの巣を壊そう。おぞましい様々な虫やゴミが出てくるんだろうな。人間の生活じゃないよ、アレは。「同居が嫌なら出ていけよ」と思っていたが、逆に追い出されても文句が言えないレベルだ。近所の家々へのゴキブリ派遣元なんだもの。


妻は、今のところ同居に反対していない。むしろ新居での生活を早く楽しみたいと、新しい家具を嬉しそうに選んでいる。ここらでもう一度しっかり説明して話し合うか。同居のメリットとデメリットを。
そして私の意見を聞いてもらって、選択してもらおう。彼女にとっても人生の分岐点だ。同居によって人生を狂わされた見本のような女を間近で観察して、しっかり判断してくれ。

無理強いはしない。どんな結論でも尊重するよ。