ふりだしにもどる

荷物を捨てられない人間が持つ物への執着心は凄い。
ゴミ屋敷の荷物をどうするかは、改築に向けて避けては通れない問題だ。これが一番の障壁だと思っていたのに、話を進めて行く過程で話題に上がらないことに違和感を覚えていた。正直、改築を納得させれば片付けや処分をせざるを得ないだろうと考えていた。正面からいらない物を捨てろと言ったら話し合いにならないと思ったからだ。
父や祖父母とは暗黙の了解で私と意志の疎通が図れていた。父親が母屋を壊すのに反対していたのは、建替えの期間に仮住まいに引越したくないという理由だった。5、6ヶ月間でも引越しが嫌だと言う。私には理解出来なかったが、賃貸経営をしているオーナーが他の借家を借りる事への抵抗感が強い様だ。しかし、所有している借家に近々空きが出るという知らせがちょうど良いタイミングで入りこの問題はあっさり解決した。あとはゴミ屋敷を解体して新居を建てることに反対は無かった。

さて、いよいよ工務店ハウスメーカー選びに入り理想のお家を建てますか!となったところで荷物の整理の話が母から出た。
曰く、「蔵が欲しい」「二階建ての倉庫を別に建てたい」。理由を聞くと、新居に収納しきれない荷物を置くためだと言う。現在の母屋も押入れなどの収納は全て埋まっていてそれらは全て捨てられない必要な物だと。
以下、やりとり
私「既に倉庫はあるじゃない。」
母「あそこは必要な物で埋まっている。」
私「普通は家に入りきらないほどの物はとっておかない。新居の家具家電は新しいので揃えたいので処分して欲しい。」
母「冷蔵庫・洗濯機(20年選手)もまだ使えるし思い入れがあるので倉庫で使う。」
私「!?。空地は駐車場として簡単な屋根は付けるつもりだけど、倉庫なんて予算的にもムリ。」
母「みんなであたしの人生を否定する−。新居に居場所なんかいらないから離れに住みたいよー。」

建替えの設計で納戸を多く作るし自分の部屋では好きにしていいと言っても、「家では息が詰まって何も出来ない。駐車場に自分の居場所が欲しい。」の一点張り。

今回の同居は「家族をやりなおしたい」という昔からの私の夢が根底にある。息子に祖父母や曾祖父母との豊かな暮らしをさせたい。子供が巣立ってバラバラになった家族がもう一度一緒に暮らすことで様々なメリットを共有したいと思っている。最初から別棟を建てるつもりは全くないし、逃げ場を用意せねば息苦しくて暮らせないなら元々実現不可能な計画だ。
そして息苦しくならない設計を考えるエネルギーは可能な限り妻のために使いたいと思っている。一番大切な家族だから。

母の物への固執っぷりを見ると、例え蔵を建てたとしても同居は難しいと思えてきた。
選択肢はいろいろある。同居以外も視野にいれて考えよう。
自分の人生だ。